ラボラトリーフィルム

こちらはお客様に提案する定番メニューではなく、バーヒグチで使用する「定番グッズ」の一つです。ラボラトリーフィルムとは、医薬関係の研究所や医療機関などで使用される化学実験用のテーム(?)です。揮発性の高い酢酸やクロロホルム、エタノールなどが容器から気化するのを防ぐ目的で使われています。
では何故、Bar Higuchiにこれがあるのでしょう?そう、ウイスキーやブランデーの香りや味わいの変化を最小限にとどめる為に、これらを使用する事が当店では当然の作業となっているのです。お客様から、「ウイスキーは開けてからどのくらいまで飲めるの?」「買ってからかなりの年数が経っているのだけれど果たして飲んでも大丈夫だろうか?」などと質問を戴くことがよくあります。基本的に蒸留酒の場合、飲もうと思えばいつまででも飲める訳です。しかし、問題は開栓の有無や保存状態によりその香りや味わいが変化してしまうことにあります。直射日光に当てたり(蛍光燈もあまりよくないです)、極端に湿度、温度が高かったり低かったり、振動のあるところに置いていたり、ちゃんと栓をしていなかったりすると別ですが、蒸留酒はそんなにいきなり劣化することはないようです。むしろ開けたてより、より最後の方が美味しく感じることもあるように、そのお酒にもよりますが参加も必要ではあるわけですね。私見ですが開けてより3ヶ月ぐらいの間に飲みきってしまうのであれば何も問題はないように思います。 しかし、当店のように数百本ボトルを備えていると、3ヶ月をゆうに超えてしぶとく存在するボトルも多くあります。そこでこのラボフィルムの登場となるわけです。近年のボトルではスクリューキャップは少なくなり、より気密性の高いコルク栓が主流となっていますが、長期にわたる香味成分の揮発は防ぎようがありません。滅多に開けず一人で飲み切るとなれば窒素ガスを使用するのがベストであるのでしょうが、バーでのルーティンワークに適さず、コストもかかります。
また、スティルワインなどでよく使用するエア抜き(減圧密封)は、水分の多い醸造酒では有効ですが、蒸留酒の品質保持にはかえってマイナス。ウイスキーやブランデーなどの酸化と香味成分の揮発抑制には、やはりラボフィルムが現実的かつ効果的であるように思います。
ちなみに当店で使用するラボフィルムはパラフィルム(商品名、アメリカ製)。2cm×5cmほどに切り取り、ボトルの開栓部分にあて、引き伸ばしながら2周半ほど巻き付けます。面倒なようですが、慣れてくるとちょっと楽しい作業です。